食生活の見直しは「油」から始めるといい──あれもこれも我慢しなくていい理由
体調を食から見直したい。でも、砂糖も、パンも、揚げ物も、全部いっぺんに我慢しようとすると、たいてい続きません。私も何度も、それで挫折してきました。 結論から言います。減らすものは、一つに絞るのがコツです。それも「油」から。 油を入口にすると、不思議なことに、砂糖も小麦粉も乳製品も、あとから自然に減っていきます。なぜそうなるのか、そして今日から何をすればいいのかを、順番に書いていきます。 減らすなら、いちばん最初に「油」を選ぶ 植物油・砂糖・小麦粉・乳製品。健康のために減らしたい、と言われる代表格です。 でも、この4つを同時に我慢するのは、意志の力を4方向に分散させることです。1つ崩れると、たいてい全部崩れます。「今日は疲れたから」で、ドミノのように戻ってしまう。 そこで、4つのうち「油」だけを入口にします。あとで詳しく説明しますが、油は残りの3つと"セット"で存在していることが多く、油を避ける行動が、そのまま砂糖・小麦粉・乳製品を避ける行動になるからです。 一つの行動で、四つが動く。これが、最初に油を選ぶ理由です。 なぜ油を減らすと、砂糖も小麦粉も減るのか スーパーで、加工食品の裏の原材料表示を見てみてください。 パン、お菓子、惣菜、レトルト。そのほとんどに「植物油脂」と書かれています。そして、油が入っている食品には、たいてい砂糖も一緒に入っています。 これは偶然ではありません。油と砂糖は、食品を「おいしく・日持ちよく・やみつきに」するための、基本のセットだからです。実際、アメリカ政府も2025-2030年版の食事ガイドラインで、超加工食品を避けるよう初めて明記しました。 つまり、「油が入っているものは避けよう」と思って選ぶと、その食品ごと——砂糖も、小麦粉も——買い物カゴから外れていきます。 油という一点をフィルターにすると、超加工食品がまとめて落ちる。これが、「油を入口にすると、あとは勝手についてくる」の正体です。あれもこれもと禁止リストを覚える必要はありません。見るのは、油だけでいい。 そもそも、なぜ現代人は油を摂りすぎるのか そもそもの話をします。昔の日本人は、油をほとんど摂っていませんでした。意志が強かったからではなく、油を大量に使う"土台"が、そもそも無かったからです。 江戸の台所の主役は、竈(かまど)と囲炉裏。煮る・蒸す・焼くための道具で、油を高温で使う揚げ物・炒め物には向いていません。しかも江戸は木造の密集都市で火事が多く、油を熱する調理は危険物あつかいでした。天ぷらが江戸末期まで屋台限定だったのは、そのためです。 油で炒める毎日が家庭に定着したのは、フライパンとガスコンロが普及した戦後・1950年代以降。たった70年ほどの、新しい習慣です。 さらに、透明で安い「サラダ油」の命名は1924年、無味無臭の固形油脂「ショートニング」は1911年。油が精製されて摂りやすくなった結果、日本人の脂質の摂取量は、戦後すぐと比べておよそ4倍に増えました。 体は、数千年かけてできた仕組みのまま。道具と油だけが、数十年で一変した。摂りすぎてしまうのは、意志の問題ではなく、環境が変わったからです。だからこそ、意識して初めて、元の量に近づけます。 「油を入口」にする、具体的な3ステップ 理屈が分かったら、あとは行動です。難しいことはしません。 1. 原材料表示の「油」を見る癖をつける 買う前に裏返して、「植物油脂」の文字を探すだけ。入っていたら棚に戻す、を何回か繰り返すうちに、超加工食品が自然と減っていきます。覚えるのは、油だけでいい。 2. 外食・惣菜の回数を「数える」 外食や惣菜は、油を自分で「足さない」という選択ができません。私は外食した日を毎日1タップで記録してみたのですが、数えているうちに、外食は自然と減りました。減らそうと頑張るより、ただ数えるほうが効きます。 3. 家では油を「足さない」 毎日でなくて構いません。週に何日か、炒めない・揚げない日を作る。蒸す・煮る・焼くに寄せるだけで、家の油は静かに減っていきます。 物足りない時は「うま味」で埋める 油と砂糖を減らすと、最初に来るのは「物足りなさ」です。コクや満足感を、そこでつけることに慣れているからです。 そこで頼れるのが、出汁のうま味です。昆布のグルタミン酸と、鰹節のイノシン酸。この二つを合わせると、うま味は最大で7〜8倍にふくらみます。江戸の食卓も、油ではなく出汁で満足感を作っていました。 コクの出どころを、油から出汁へ置き換える。これだけで、物足りなさはかなり埋まります。 まとめ:油を入口にすれば、あとは勝手についてくる 食生活の見直しでいちばん大事なのは、頑張る量を増やさないことです。 4つを一度に我慢するのではなく、「油」という一点に絞る。油を避ける行動が、砂糖・小麦粉・乳製品を、同時に連れて出て行ってくれます。 私自身、植物油・砂糖・小麦粉・乳製品を見直してきて、いちばん体の手応えが変わったのも、いちばん続けやすかったのも、油を入口にしたときでした。 今日できることは、たった一つ。次に何かを買うとき、裏の原材料表示の「油」を、一度だけ見てみる。見直しは、そこから始まります。