加工食品にはなぜ油が仕込まれているのか──「見えない油」の正体と数字
あなたが今日摂った油の大半は、 自分では選んでいません。 サラダにドレッシング、パンにマーガリン、炒め物に一さじ。そうやって「かけた」油は、まだ見えています。 でも、パン、お菓子、カップ麺、冷凍食品。買った時点で、すでに油が仕込まれていることには、ほとんど気づいていません。 結論から言います。油を減らすなら、かけた油だけでなく、すでに仕込まれている油にも気づく必要があります。原材料表示を見れば、その存在がわかります。 なぜ加工食品にはほぼ必ず油が入っているのか 原材料表示を裏返してみてください。パンにも、お菓子にも、惣菜にも、レトルトにも、ほとんど油が入っています。油が入っていないものを探すほうが難しいくらいです。 理由は単純で、油は食感と、日持ちと、やみつき感を作るからです。ふんわりしたパン、サクサクのお菓子。その口あたりの多くは、油が担っています。アメリカ政府も、超加工食品を「保存期間・スピード・中毒性のために設計された食品」と定義しています。 そして、油が入っている食品には、たいてい砂糖も一緒に入っています。だから「油を避けよう」と思って選ぶと、砂糖も、小麦粉も、乳製品も、自然に落ちていきます。 名前を変えて隠れる油、パーム油の正体 世界で一番使われている植物油は、パーム油です。アブラヤシという木の実から搾る油で、常温だとバターのように固まります。 そして、圧倒的に安い。同じ面積の畑で採れる量が、大豆油のおよそ10倍ともいわれています。安くて、固まる。だから、パンにも、お菓子にも、カップ麺にも、アイスにも使いやすいのです。 日本人ひとりが1年間に食べる量は、およそ4kg。それだけ食べているのに、原材料表示に「パーム油」と書かれることは、ほとんどありません。「植物油」「植物油脂」「加工油脂」。まとめてそう表示していい決まりになっているからです。 安くて使いやすいものほど、名前を隠されています。これが「見えない油」の正体の一つです。 揚げ物の「衣」が油を何倍にも増やす仕組み もう一つ、見えにくい油の増え方があります。揚げ物の「衣」です。 衣は、サクサクの食感を作るだけの飾りではありません。油を吸い込むスポンジでもあります。食材が油をどれくらい吸うか、数字で見るとはっきりします。 素揚げなら3〜8%。天ぷらになると15〜25%。衣をたっぷり絡めるかき揚げは、40%を超えることもあります。「何を揚げたか」より、「どう衣をつけたか」で油の量は決まっていくのです。 揚げ物をやめなくても、衣を薄くする、素揚げを選ぶ。それだけで、吸い込む油はぐっと減らせます。 身近な数字で実感する 見えない油を、実感できる数字に変えてみます。 マヨネーズ大さじ1杯には、約9gの油が入っています。マヨネーズは重さの3分の2以上が植物油でできているからです。「サラダだからヘルシー」と思って大さじ2杯かければ、それだけで18gの油をかけていることになります。 カップヌードル(レギュラー)1食の脂質は、約14.6g。厚生労働省の統計によると、戦後すぐの1946年、日本人が1日で摂っていた脂質は約14gでした。つまりカップ麺1杯だけで、当時の人が1日かけて摂っていた油の量を、もう超えているのです。 今の摂取目安に照らせば「大したことない」量かもしれません。でも、その目安自体が、生活習慣病が増え続けた時代とともに膨らんできたものです。 まとめ:見えない油に気づく3つのチェックポイント 見えない油に気づくために、難しいことをする必要はありません。 1. 原材料表示の「油」を見る 「植物油脂」「加工油脂」という文字を探すだけ。入っていたら棚に戻す、を繰り返すうちに、超加工食品は自然と減っていきます。 2. 揚げ物の「衣」を見る 同じ食材でも、衣が厚いほど油を多く吸います。素揚げ、薄い衣、フライ、天ぷら、かき揚げの順に油は増えます。選べる場面では、衣が薄いものを選ぶだけで変わります。 3. 「量」を数字に翻訳する 大さじ1杯、カップ麺1杯。何気なく口にしているものを、一度グラムで数えてみる。数字にした瞬間、見えていなかった油が、はっきり見えてきます。 油は、かけるものだけではありません。ほとんどは、すでに仕込まれています。原材料表示を裏返す、衣の厚さを見る、量を数字に翻訳する。この3つがあれば、見えない油は、見える油に変わります。